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[008] 弁の働き valve in the thin‐walled vessel (GB#103G01)

[008] 弁の働き valve in the thin‐walled vessel (GB#103G01)

valve in the thin‐walled vessel
●弁が多い管は他力をうまく利用する

からだの中にはいくつも弁(べん)がある。 弁は逆流を防いで一定方向にものが流れるようにするしくみだ。 一番目立って知られているのはもちろん,心臓にある房室弁(ぼうしつべん)や動脈弁たちで,一生の間,絶え間なく激しくはたらきつづけて命を支えているけど,そのほかにも地味な弁がいくつもある。

●静脈にあって,動脈にない

たとえば手足の血管にも弁がある。 ただし動脈や毛細血管にはなくて,静脈にだけある。 静脈弁(じょうみゃくべん,venous valve)と言われている。 それにリンパ管にもさらに多くの弁がある。 静脈弁もリンパ管の弁も,共通しているのは心臓に向かって血液やリンパ液を戻す方向についている点だ。 しかしこれらの管の中の弁は,逆流を防ぐだけでなく,さらにもっと巧妙なしくみを持っている。 その中身を送る原動力に他力を利用しているのだ。

心臓が元気よく送り出した血流の圧力は,血管が枝分かれするたびに急激に弱くなり,末梢の毛細血管のところではすっかり大人しくなってしまっている。 毛細血管の薄い壁を破らないようにするためにはしかたないけれど,毛細血管の管は極細なのでその中の流れは速い。しかし,その先の血管の枝は徐々に太い静脈血管にまとまっていく。 そのため血液の流れは一気に遅くなる。 ちょうど流れの速い渓流がまとまって小川を経てはさらに大きなゆったりとした川の流れに移り変わる様子に似ている。 リンパ管は毛細血管から漏れ出た組織液を端っこの毛細リンパ管から少しずつ吸い込んでいく。 この管も細い毛細リンパ管から徐々に太いリンパ管へまとまっていく過程で流れはゆっくりとなっていく。 リンパ管は血管の動脈みたいに組織液を積極的に押し込む管はないので,よけいに不利だ。

●心臓に戻る循環路の壁は貧弱

静脈血管やリンパ管の壁は同じレベルの動脈に比べるとずっと薄くてへなへなしている。 しかしそれなりの平滑筋を持っている。 だからただのゴム風船みたいな管ではない。 その平滑筋が縮んだりゆるんだりすることで,ごく貧弱な心臓のようなポンプの働きをするにはする。 だけど,これだけでは血液やリンパ液を重力に逆らって心臓に戻すには心もとない。
さて,実をいうと静脈やリンパ管と大河の流れは似ているようで本当は大きく違っているところがある。
川の流れは見た目はゆったりでも,常に重力の力が引っ張っている方向に流れている。 だから川の流れはとどまるところを知らない。 いわば地球が味方をしている。 一方,静脈やリンパ管はだいたい手足の先っぽから心臓に向かっての流れなので,立っている姿であれば,たいてい重力に逆らっている。 この流れは地球が邪魔しているのだ。勝てるわけがない。 どうする,どうする?

●心臓に戻る循環路は身体全体のシステム

静脈血管やリンパ管は他人の力をうまく利用しているのだ。 それもこっそりと相手が知らないうちに借りている。 黙って使われているのは周りを固めている骨格筋たちの運動だ。 隣り合わせていたら動脈の拍動も利用しているらしい。 骨格筋に力が入って膨張すると自分はつぶれる。 そのとき弁が威力を発揮して血液やリンパ液を先に送る。 周りが緩むとわずかに残った内圧で管が膨らむ。 周りが力を出すとまた弁が働いて液を先に送る。
自分の壁がへなへななのも実は周りの動きを素直に利用するためだったりする。 これらの管は貧弱なつくりではあるけれど,戦略は巧妙でしたたかだ。 もっとも,知らず知らずの周りの協力がないと弁の威力は半減してしまう。 立ったままじっとしていると足がむくみがちなのはそのためだ。 本来,歩いたり,立ったり座ったりという身体全体の動作をすることを前提として循環システムが作られているということだ。 (とはいえ,頭を上にして直立しているのは,四足から進化した動物にとって,生理学的には不利な態勢だ。 だから多少動いたって,立ちっぱなしだったらやっぱりむくむ。)
横になれば重力の妨げは小さくなるけれど,下になったところは圧迫されてつぶれているから,これも適当に寝返りをうつのも必要だ。

●そのほかの弁(ほか弁)

弁の運動(1)m180
からだの中の管といえばほかに消化管がある。 長い長い管なので弁はいくつもあるように感じるけれど,解剖学の教科書に出てくるのは,小腸(後半である回腸)から大腸(入り口にある肓腸)への境界にある,回盲弁(バウヒン弁)くらいなものだ。 これはほかの力を利用して云々ということはなくて,単純に大腸から小腸への逆流を強力に防いでいる堂々とした弁だ。
でもそういえば消化管(?)には,一番最初にもうひとつ大きな弁があった。 弁が立つ,能弁,と言えばしゃべりが上手いことだ。 弁舌という言葉があるように,この弁は,しゃべるときの道具である舌のことを指しているのは明らかだろう。

**************

ところで弁のことは英語でバルブ valveという。 バルブを開ける,閉めるというときのバルブだ。 バルブには流量が調節できる栓という意味もあるようだ。 一方,脳の延髄(えんずい)に対してもバルブという言い方があるけど,これはその形から球根 bulb の意味で,つづりが違う(発音も違うけど)。 ついでに電球のことも bulb という。

・循環の弁のはたらきについてもっと知りたい ⇒ 「心筋」東邦メディアネットセンター
・静脈弁の実物が見たい ⇒ 静脈弁(Web Histology/Umin)
BodyParts3D/アナトモグラフィー ← いろいろなボディパーツが3DのCGで用意されている。

○関連する記事

[016] 血液循環 blood circulation
[001] 心臓のポンプ機能 heartbeat pumping
[051] 心臓のポンプ機能2 heartbeat pumping 2 heartbeat-high6-m80.gif
[005] 蠕動(ぜんどう)運動 peristalsis
[012] 分節運動 intestinal segmentation 
[025] 血管の運動 vasomotor

○参考文献

ぐるぐる回す循環器 文光堂 (2013/11)
臓単―ギリシャ語・ラテン語 (語源から覚える解剖学英単語集 (内臓編))
カラー図解 人体の正常構造と機能 全10巻縮刷版,坂井 建雄,日本医事新報社
人体機能生理学,杉 晴夫,南江堂
トートラ人体解剖生理学 原書8版,丸善
イラスト解剖学,松村 讓兒,中外医学社
・柔道整復学校協会編「生理学」,南江堂
・東洋療法学校協会編「生理学」,医歯薬出版株式会社

rev.20160904,rev.20170208,rev.20170502.

◆こころ医療福祉専門学校
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