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[043] 糸球体のろ過 glomerular filtration (GB#108B02)

[043] 糸球体のろ過 glomerular filtration (GB#108B02)

glomerular filtration
●絞った水のほとんどは尿にならない

尿(urine)は,腎臓(kidney)で作られるけれど,腎臓の細胞からの分泌物を集めたものじゃない。 腎臓の中に無数に散らばる糸球体(しきゅうたい,glomerulus)と呼ばれる特殊な毛細血管の壁を通り抜けた血液の絞り汁が尿のもとになる。 ところが,絞り出した汁の 99 % は腎臓の中ですぐに回収している。 どうしてそんな面倒なことをしているのだろう。

●尿の生成はろ過から始まる

腎臓で尿を作る仕事は一日中休みがない。 そのスピードは左右合わせて 1 分間に 1 ミリリットルというから,締まりの悪い蛇口のぽたぽた漏れよりもまだ少ないくらいだ。 これだけの尿を作るために腎臓の中では,その 100 倍の水分が老廃物と一緒にいったん尿の管の中に追い出されている。 仕組みは,基本的に混ざり物の大きさで振り分ける,意外と単純なろ過(filtration)という現象だ。

●最初は大きさで振り分ける

腎臓は尿素(urea),尿酸(uric acid),アンモニア(ammonia)をはじめとする体中で発生したいろんな老廃物や,わけのわからない物を効率よく捨てなくちゃならない。 心臓から全身には安静時でも 1 分間にだいたい 5 リットルの血液が流れる。 その 5 分の 1 から 4 分の 1 ( 1 ~ 1.25 リットル)という大量の血液が 1 分間に腎臓の中を通り抜ける。 その速い流れの中から,いろいろな老廃物を選んで集めていくというのはあまり良い方法ではないらしい。 捨てるべきものはもともと血漿の中にそれほどの濃度で流れているわけではないから,それだけを選んで捨てるのは難しい。 なかにはよく知らない物も混じっているだろうし,知らない物を選んで出すという仕組みも難しい。 そこで腎臓はまず,よく知らない物も含めて捨てたい物は,捨ててはいけない物とは区別せずに,ほとんど大きさで,代表的な血漿タンパク(plasma protein)の小さいほう,アルブミン(albumin)の半分くらいの大きさ以下だったら捨ててしまうのだ。

●毛細血管を出てもまだ動脈

糸球体は特殊な毛細血管の塊で,小さな塊がボーマン嚢(ぼーまんのう,Bowman’s capsule)と呼ばれる袋に包まれている。 このセットをまとめて腎小体(じんしょうたい,renal corpuscle)ともいう。 ボーマン嚢は尿を濃縮していく尿細管(にょうさいかん,renal tubule)の始まりでもある。 糸球体になる直前の血管は一本で,輸入細動脈(ゆにゅうさいどうみゃく,afferent arteriole),糸球体から出ていくところの血管も一本で,これは輸出細動脈(ゆしゅつさいどうみゃく,efferent arteriole)という変わった名前の細動脈だ。 気を付けるのは毛細血管から出ていくところも動脈(artery)で,静脈(vein)じゃないことだ。 この血管系の静脈は糸球体からずっと離れた場所の尿細管の周りを巡ってからになる。 これが糸球体の毛細血管が特別なところのひとつだ。 腎小体の出入り口と毛細血管の根本はメサンギウム(mesangium)と呼ばれる特別な組織が隙間を埋めて漏れがないように固めている。

●糸球体の毛細血管は穴ぼこだらけ

輸入細動脈は腎小体に入るとすぐに枝分かれした毛細血管になる。(アニメーションでは省略して一本だけにしているのは言うまでもない...) くるっと腎小体の中で一巡りしたら再び集合して輸出細動脈となって腎小体から出ていく。 問題なのは糸球体の部分で毛細血管の壁は穴ぼこだらけなのだ。 壁を作っている内皮細胞(endothelial cell)同士の隙間が大きいのではなくて,内皮細胞そのものに大きな丸い窓がいくつも開いているという格好だ。 いかにもろ過をする篩(ふるい)の役目のようだけど,大きな窓なので,赤血球など細胞を遮ることはできても血漿タンパクを篩い分ける役には立たない。 血漿タンパクなどを濾し分けるフィルターは,毛細血管の外を隙間なく覆っている糸球体基底膜(glomerular basement membrane)の役目らしい。 内皮細胞の窓はこのフィルターに血漿が接する面積を増やしていることになる。 基底膜の外側にはタコ足細胞(podocyte)という最高にへんてこな名前と形の細胞の”足”が貼りついている。 基底膜で濾し出された汁はこの足の隙間からボーマン嚢のボーマン腔(Bowman’s space)に湧き出てくるという仕組みだ。 タコ足細胞はボーマン嚢の壁を作る細胞の特殊化したもので,糸球体の形を保つ機械的な構造体の役目(だけじゃないかもしれないけれど)を果たしている。

●水と一緒に洗い流す

腎小体の基底膜を通して,腎臓に流れる血漿の水分がその成分と一緒に濾し出されてくる。 押し出す力は基本的に糸球体の血圧だ。 ボーマン腔に出てきたこの状態の液体を,尿の一番最初の状態ということで,原尿(げんにょう,primitive urine)ともいう。 血漿に残るのは血漿タンパク質,脂肪を運搬する袋のカイロミクロン(chylomicron)くらいで,それ以外は,原尿の成分と濃度はほとんど血漿と同じになる。 だから,血漿の老廃物を多く捨てようとするとそれだけの多くの水分も出さないといけない。 ところが,その中には血漿に溶けているイオンはもちろん,ブドウ糖もアミノ酸も,本来捨ててはいけない物が大量に混じっている。 だからろ過する量が多ければよいというわけにはいかない。 実際は,腎臓を流れる血漿のおよそ 5 分の 1 の量,大雑把に言って 1 分間におよそ 100 ミリリットルが糸球体でろ過されて出てくるという。
(腎臓に流れる血液量が 1 分間に 1 リットルだとすると,血漿は血液の約6割なので,1 分間に流れる血漿量は 1 リットル × 0.6 = 0.6 リットル(600 ミリリットル)となる。)

●老廃物の血漿濃度は糸球体の始まりと終わりで変わらない

糸球体の壁を通り抜けていく物は,水と一緒に出ていくだけなので血漿でも原尿でも濃度に差はない。 だから糸球体で老廃物を濾し出しても,輸入細動脈の血漿中濃度と糸球体を出たばかりの輸出細動脈の血漿中濃度は変わらない。 ただし,水分を含めた血漿量は 4 分の 3 に減っている。 当然,老廃物の量も減っている。 一方で,血漿タンパク質は血管から出ずに残る。 ということは血漿タンパク濃度は上昇していることになる。 実際のところ,血漿タンパク濃度は糸球体を通る間に 1.5 倍になるらしい。 ということは血漿膠質浸透圧(けっしょうこうしつしんとうあつ,colloid osmotic pressure)もおよそ 1.5 倍に上昇する。 血漿膠質浸透圧は血管に水を引き込む力なので,これは糸球体でのろ過に影響を与える力になる。

●糸球体ろ過は押す力と引く力のせめぎ合い

糸球体でろ過される水分量は,糸球体ろ過量(glomerular filtration rate, GFR)と呼ばれ,糸球体を流れる血漿量と糸球体での血圧に依存する。 それだけでなくて,ろ過を妨げる力も無視できない。 そのひとつが血漿膠質浸透圧で,もうひとつがボーマン嚢内圧だ。 つまり原尿が増えるとボーマン嚢の壁を押し広げようとする力になるけど,それが逆に糸球体に水を押し戻そうという力に替わるのだ。 これらの力のうち,血漿流量は正常な範囲の血圧変動では,糸球体を流れる量は影響を受けない仕組みになっているので,普通,糸球体血圧・血漿膠質浸透圧・ボーマン嚢内圧の3つが実際の糸球体ろ過の力を決める因子とみなされている。つまり,
  ・正味の糸球体ろ過圧=糸球体血圧-(血漿膠質浸透圧+ボーマン嚢内圧)
の形になる。
糸球体血圧は糸球体全体を通じて普通の毛細血管よりちょっと高めの,だいたい 45 mmHg で安定している。 ボーマン嚢内圧もおよそ 10 mmHg で安定している。 一方,血漿膠質浸透圧は上で示したように,糸球体の始まりでは 23 mmHg 程度だけど,終わりでは 35 mmHg になる。 そうすると上の式によると,糸球体の終わりではろ過圧はほぼゼロに近い。 糸球体のろ過は前半が命という感じだ。

●尿の出来を見ながらろ過量を安定させている

ろ過自体は物理的な力で血漿の成分を押し出しているだけだけれど,そのスピードはあとの尿細管での吸収過程に影響を与える。 糸球体のそばに密着するような形で,尿細管の後半部分,遠位尿細管(えんいにょうさいかん,distal convoluted tubule)がかすめていて,尿の途中経過の情報を伝えるようになっているのに頭が下がる。 この遠位尿細管の糸球体に接する壁の一部,緻密斑(ちみつはん,macula densa)と呼ばれる部分が特殊な働きをもっていて,糸球体に入る直前の輸入細動脈とメサンギウムの細胞に情報を送って,糸球体に入る血液量を微妙に調節しているという。 それで全身の血圧が上がったり下がったりしても,腎臓のろ過は安定した状態で維持されるというわけだ。

●血液は一日で50回ろ過される

腎臓のろ過量が 1 分間で 100 ミリリットルというのは,これだけではどんな量かぴんとこない。 しかしこれが 24 時間ずっとこの調子で原尿は作られる。 ということは,1 時間で 0.1 リットル × 60 分 = 6 リットル,一日で 144 リットルというとんでもない量になる。 教科書的には 1 日で平均 150 リットルの水分がろ過されるという。 実際に腎臓から尿となって出ていく量は 1 日に 1.5 リットルだけで,残り 99 % の 149 リットルは再び腎臓に回収されて血漿に戻る。 これは全血液に含まれる血漿量,5 リットル × 0.6 = 3 リットルの 50 倍だ。 つまり全身の血漿は一日に 50 回,腎臓で繰り返しろ過されていると考えてもいいようなものだ。 (血液循環そのものは 1500 回くらい回っているけれどね。)

●必要なものは後で回収する

ろ過された大量の水と一緒に捨てられた混ざりものの中にはイオンやブドウ糖,アミノ酸をはじめとするいろいろな大事なものが含まれている。 これらはろ過された後の長い尿細管の道のりの中できちんと回収されるので(健康なら)心配ない。 特にブドウ糖とアミノ酸は比較的早い過程で 100 % 回収される。 水分とナトリウムイオンは尿細管の長い道のり全体をかけて,いろいろな調節を受けながらほぼ 99 % が回収され,残りが尿として排出される。 水分とナトリウムイオンの回収率はほぼ同じなので,出来上がりの尿の塩分濃度も結局,血漿とほぼ同じだ。 一方,回収されない老廃物は水分が 100 分の 1 になるので,濃度は基本的に 100 倍に濃縮されることになる。 ただ回収の部分の話は細かい事情がいろいろあるので,また別の機会に譲ろう。 

●糸球体は壊れたら元に戻らない

糸球体は微細な構造の上に,一日中休みなく使われているからだろうか,一度壊れるとその糸球体は再生しない。 健康な人でも年をとるにつれて,徐々に使える糸球体の数は減っていくらしいけれど,進行的に次々に壊れていくと腎不全(じんふぜん,renal failure)という病気になる。 もとに戻せないというのは実に怖い。

※いろいろな数値がでてきてこんがらがるので,まとめると,
          1分間     一日    大雑把な目安
             単位 リットル
・血液循環量     5(安静時)
・腎臓循環血液量  1~1.2         全循環量の1/4~1/5
・腎血漿流量    0.6~0.8         全循環量の1/4~1/5
・糸球体ろ過量  0.1~0.12    140~170  血漿流量の1/5
・尿量       0.001(1ml)   1.5    ろ過量の1%

○参考にしたサイト

一般社団法人日本泌尿器科学会
https://www.urol.or.jp/public/index.html
腎不全|病気について|国立循環器病情報サービス
一般社団法人全国腎臓病協議会

○関連する記事

[016] 血液循環 blood circulation
[037] 膠質浸透圧 colloid osmotic pressure
[006] 浸透圧(しんとうあつ)  osmotic pressure 
[011] 体内の酸性・アルカリ性と炭酸ガス body acid-base reaction and carbon dioxide gas
[017] 糖質の吸収 absorption of carbohydratel
[025] 血管の運動 vasomotor
[033] 平滑筋の収縮 smooth muscle contraction
[046] 消化と代謝 digestion and metabolism

○参考文献

カラー版 ボロン ブールペープ 「生理学」, 西村書店
カラー図解 人体の正常構造と機能 全10巻縮刷版,坂井 建雄,日本医事新報社
柔道整復学校協会編「生理学」,南江堂
東洋療法学校協会編「生理学」,医歯薬出版株式会社

rev.20140706, rev.20150701,rev.20170506.


◆こころ医療福祉専門学校
http://kokoro.ac.jp/

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コメント

    (なおちゃんより) [2014/07/24][1:22 PM]

    ありがとうございます!!アニメーションも待ってます!

    (ceoKIKKENより) [2014/07/23][7:43 PM]

    確かに難しいですよね(^_^;) 。大脳基底核が壊れたら、小脳が壊れたら、という話はできますが、だからと言って、それだけで壊れていないときはどのような仕事をしているのかを簡単に説明することはできません。例えば、テレビのある部品が壊れた時、音が出なくなったとします。他の症状はなければその部品が音に関係していることはわかりますが、それだけでその部品がどのように音を出す仕事に関わっているのかはわかりません。だから、確実に言えることは、大脳基底核が不随意運動を起こさないように働いている、小脳が運動失調を起こさないように働いている、というくらいでしょうか。
    ただ、さらに突っ込んだこれまでのいろんな細かい研究の成果の踏まえて、大胆にまとめると、大脳基底核は大脳皮質と連携して、運動の意図と計画を整理する仕事をしている。だから壊れると意図しない運動が止められない(不随意運動)か、意図が表に出せない(寡動)になる。小脳は実際の運動が大脳皮質の運動計画通りに実行されているか監視して、過不足があれば大脳からの指令を調整する働きをしている。だから壊れると調整が上手くいかずに、意図したとおりに運動できない(運動失調)というようなことが言えるかと思います。
    ただしこれは運動のコントロールに関してだけで、そのほかにもそれぞれの中枢が関わる重要な仕事もありますが、それは無視しています。大脳皮質と大脳基底核、小脳、それに視床なども加えた運動コントロールの大雑把な関係については、そのうちこのサイトでもアニメーションで出そうと思っています。しばらくお待ちください。

    (なおちゃんより) [2014/07/22][4:22 PM]

    いつも楽しく拝見させてもらってます。難いことまで、このサイトは分かり易く紹介してくれています。
    そこで、管理者様に1つ相談があります!!
    大脳基底核や小脳が、どのような仕事をしているのかがイメージ出来ません!!
    教科書などには運動調節と書かれているのですが、普段自分が意識しないで行っていることなので、うまく理解できないです!!助けて?

基礎医学教育研究会のサイト、KIKKEN Lab(きっけんラボ)へようこそ。

ポイントを伝えるために大胆に要約しています。なお、内容には基礎医学教育研究会独自の解釈や表現が含まれています。あらかじめご了承ください。

できるだけ間違いのないように気を付けていますが、まったくないとは言えません(^_^;)(結構あります)。不明な点はご指摘いただけると助かります。 ※過去の記事でも、必要に応じて頻繁に修正しています。このオンラインの記述が最新版です。

アニメーションはこのまま画面から、PowerPointスライドにコピペできます。 利用するときは(KIKKEN, 2018)と付けてください。このサイトのコンテンツは、引用されたものを除き、基礎医学教育研究会およびその代表者である ceoKIKKEN に著作権があります。

KIKKEN(きっけん) は KISO IGAKU KYOIKU KENKYUKAI の略称(acronym)です。

※掲載している動画はあくまでもイメージです。

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