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[006] 浸透圧 osmotic pressure (GB#101F01)

[006] 浸透圧 osmotic pressure (GB#101F01)

osmotic pressure

●細胞は水を吸い込む袋だ。

生き物の体の成分でとにかく一番多いのは水だ。 水の中に何か物が溶けこんでいる液体を水溶液(すいようえき)という。 溶けている物は溶質(ようしつ)という呼び方をする。 これから説明する性質は,溶けている物は基本的になんでもよい。 これに対して溶質を溶かしている水の方は溶媒(ようばい)という言い方があるけど,生き物の話の場合,溶媒は水に決まっているので,水のままで行こう。

●細胞は塩水の中に浮かんでいる袋だ

osmotic pressure
水の中に溶質がいっぱい溶けていると,濃度の高い,濃い水溶液ができる。 あまり溶けていないと濃度の低い,薄い水溶液になる。 細胞のまわりは,大雑把に言うと,(人間の味覚から言うと)薄い食塩水だ。 一方,細胞はいろんな物が溶け込んでいる水溶液を細胞膜(さいぼうまく)という特別の膜で包んだ袋だ。

濃い水溶液と薄い水溶液が,お互いに漏れださないようにたとえばガラス板の壁でさえぎられていると別になにも起きない。 ふたつの別々のガラスビーカーに入れられているのと同じだ。

このガラス板が無くなったら,濃い水溶液と薄い水溶液は混ざって,濃い水溶液の方から薄い水溶液の方へ溶けている溶質が広がっていくだろう。 二つの溶液の間にはどちらも同じ濃度になろうとする自然の力が働いているからだ。 ガラス板の時には完全にさえぎられているからお互いの力は働かない。
difuse

ここで,さえぎる壁が無くなるんじゃなくて,壁の性質が変わったら?どうなる。

溶質は通れないけれど水の分子は通れるような壁だったら。
そんなものがあるかというと,生き物を作っている細胞の袋の膜,細胞膜はそんな壁だ。

水分子は通すけれど,溶質は通さない,このような中途半端な膜を半透膜(はんとうまく,semipermeable membrane)という。

半透膜だと完全にさえぎっているわけではないから,通れるものは通ろうとして,二つの溶液は同じ濃度になろうとする。
濃い水溶液と薄い水溶液が半透膜で接していたらを考えよう。

同じ濃度になろうとするなら,濃い水溶液はより薄くなろうとするし,薄い水溶液はより濃くなろうとするだろう。 濃い水溶液は水を足すと薄い溶液になる。 薄い溶液は水だけを吸い出せば濃い溶液になる。 だから,溶質は移動できなくても,水が薄い溶液から濃い溶液の方へ移動すると,目標に近づくことになる。 実際,このように半透膜を通して薄い溶液から濃い溶液への水の移動が自然に起こる。これが浸透(しんとう,osmosis)という現象だ。

(ちなみに,なんでも通す膜は全透膜(ぜんとうまく)と呼ぶ。)

●水を引き込む力,浸透圧

浸透は水を動かす力になる。 この力は浸透圧(しんとうあつ,osmotic pressure)という言葉を使う。 この言葉は生理学にはしょっちゅう出てくる。 だから大事な言葉だけど,この浸透圧の説明が難しい。 本来,浸透圧は水の浸透を止めるのに必要な圧力のことだという。 何も溶けていない真水と水溶液を半透膜でさえぎったときに真水から水溶液への水の浸透が起きる。 浸透が起きるとその分,水溶液の量が増えることになる。 これが増えないように逆にかける圧力,これが浸透圧の値だそうだ。 しかしこんなことを言ってもややこしくてしょうがない。

自分は単純に,浸透圧は水を引き込む力だと教えている。 溶液の浸透圧は真水に対する値なので溶液ごとに決まった値になる。 濃い溶液の浸透圧は高く,薄い溶液の浸透圧は低い。 浸透圧は”濃度”とほとんど同じ扱いになる。 濃度が高い溶液と低い溶液が半透膜を境に接したらどうなるか。 浸透圧が高い溶液と低い溶液が半透膜を境に接したら,お互いに水を吸い込もうとするけれど,浸透圧が高い方,濃度が高い方が水を吸い込む。 表現は異なっても結果の現象は同じことだ。

”圧力”と言えば一般に,押し付ける力というイメージがあるし,実際の技術的問題もあって浸透を止める力を圧力とするのかもしれない。 しかし,水溶液が水を吸い込む力と説明したほうが単純だ。

●浸透圧は粒子の”数”で決まる

浸透は溶けている溶質の性質ではなくて粒子の密度と半透膜による性質なので,いろんな成分が混じっていても粒子の密度が同じなら浸透圧は同じだ。 ナトリウムのイオンひとつと,ブドウ糖の分子ひとつ,それにタンパク質の分子ひとつは大きさや性質は全然違うけれど,半透膜を通れない物質なら扱いは同じ1個の粒子だ。

細胞膜の内側と外側には実に様々な成分が異なった比率で溶けている。 全部ひっくるめて浸透圧はそれぞれの溶液でほぼ同じ程度になっている。 ほぼ同じだけど若干,内側の浸透圧が高めになっていて,それで細胞はわずかに水を周りから吸い込んでほんの気持ち程度膨れた状態で形を保っている。(←この表現はちょっとおかしいかも。 しかし浸透圧とは別に,細胞膜にはさまざまな輸送系が働いていて,安定した状態では全体として細胞膜にかかる膜の内側と外側の圧力はちょうど釣り合いが取れていて,細胞は膨張も収縮もしない。 外側にしっかりした細胞壁をもった植物細胞では,浸透圧による膨張力を利用して植物全体の硬い形を保っている。)

●漬物,塩漬け,浸透圧

食塩のナトリウムイオンも,味噌のアミノ酸も基本,細胞膜で引っかかる物質だ。 だから,細胞の周りを塩漬け,味噌漬けにすると細胞から水分が強い力で吸い取られる。 漬物がしわしわなのは水が抜かれたせいだ。 細胞の中の塩分,主にカリウム(これはどうかな? 細胞膜は K+ は比較的通しやすいので,抜けるかもしれない)やらアミノ酸やら栄養成分は残る。

●生け花,水やり,浸透圧

細胞を薄い水溶液につけると,浸透圧の差が大きくなるから,細胞はもっと水を吸い込む。 しおれかけた切花を水につけると,しぼみかけた細胞が水を吸い込んでパンパンに膨れてしゃきっとなる。 しおれの程度がひどいと細胞膜が壊れているからもう間に合わないけどね。

植物の細胞はひとつひとつの細胞が伸び縮みしない箱に入っているので,パンパンになってもそれ以上は膨張できない。 だけど,動物の細胞は水を吸い込む力が大きすぎると本来の大きさ以上に膨張しようとする。 細胞膜は引っ張りすぎると,伸びるのではなくて容易に破れる代物だ。 細胞が隣り合って密着している状態ならまだお互いに押し合ってなんとか保っているけれど,それぞれがばらばらで活動しているような細胞だと,膨れ上がりすぎて破裂してしまう。

※赤血球細胞が浸透圧の低い溶液に触れて破裂する現象を「溶血」という。 細胞が破れて中の赤いヘモグロビンが散ってしまって見えなくなるので,細胞が溶けて消えるように見える。

●細胞で作った壁を通してはたらく浸透圧

浸透圧は細胞ひとつひとつに対して働く基本的な大事な力だけど,細胞を集めて作った組織としての壁を通しての浸透圧の方が,どちらかというと生理学の教科書ではポイントになる。 その壁とは毛細血管の壁だ。

毛細血管の壁の隙間は,細胞膜の隙間よりずっと大きい。だからその管の壁を通して血液の水,血漿(けっしょう)の水分が出入りする。 イオンも楽に出入りする。 毛細血管の中と外ではイオンの濃度差は生じない。 だけど血液中のタンパク質は基本的にあまり出て行かない。 そのため毛細血管の中はタンパク質濃度が高く,外は低い。 そこで血漿膠質浸透圧(けっしょうこうしつしんとうあつ)という圧力が働く。 血漿膠質(けっしょうこうしつ)というのは血漿に溶けているタンパク質などをひっくるめて指している。 血漿に溶けているタンパク質のせいで血管の周りから水を吸い込む力,これが血漿膠質浸透圧だ。 つまり,毛細血管から水が出て行くけど,血漿膠質浸透圧の働きで水を吸い込むこともやってるよ,ということだ。

浸透圧についてもっと知りたい
血漿膠質浸透圧についてもっと知りたい
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細胞膜についてもっと知りたい

○関連する記事

[013] 細胞膜の脂質二重層 lipid bilayer of the cell membrane
[004] 陽イオンと陰イオン(1)引力と反発力,cation and anion, attraction and repulsion 
[037] 膠質浸透圧 colloid osmotic pressure
[043] 糸球体のろ過 glomerular filtration
[024] 電位依存性ナトリウムチャネル voltage-dependent sodium channel
[028] 静止膜電位 resting membrane potential
[017] 糖質の吸収 absorption of carbohydratel

○参考文献

カラー版 ボロン ブールペープ 「生理学」,西村書店 (2011)
カラー図解 人体の正常構造と機能 全10巻縮刷版,坂井 建雄,日本医事新報社
人体機能生理学,杉 晴夫,南江堂
トートラ人体解剖生理学 原書8版,丸善
イラスト解剖学,松村 讓兒,中外医学社
・柔道整復学校協会編「生理学」,南江堂
・東洋療法学校協会編「生理学」,医歯薬出版株式会社

ぱらぱら漫画を楽しもう!

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コメント

    (ceokikkenより) [2012/09/30][12:55 PM]

    ”浸透・圧”という言葉が聞いただけでむずかしそうだ。
    英語では浸透はosmosisという。オスモーだ。お相撲だな。
    お相撲とりはいっぱい食って、タンパク質をいっぱいためるから
    水を吸ってふくれているんだ!というのはウソだけど、
    なんとなく理解できるかな?   イヤイヤ...

    (TAKAより) [2012/09/30][12:11 PM]

    浸透圧といえば、意識してみると意外と身近なものですよね。ナメクジに塩をかけるのも浸透圧を利用していますし・・・保存食を作るときにも浸透圧を利用していますよね。肉を塩漬けにすると、肉の周りに付着する菌が浸透圧によって水分を失い、死滅するらしいです。だから日持ちするんですね。
    学生は基礎医学というとアレルギーを起こしてしまいます。意外と身近な現象を勉強しているだけな気がするんですけどね・・・

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ポイントを伝えるために大胆に要約しています。なお、内容には基礎医学教育研究会独自の解釈や表現が含まれています。あらかじめご了承ください。

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