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[036] リガンド依存性イオンチャネル ligand-gated ion channel (GB#113G02)

[036] リガンド依存性イオンチャネル ligand-gated ion channel (GB#113G02)

ligand-gated ion channel


●リガンドって何?

カタカナ言葉でも,何か物の名前だったら仕方ないと諦めるけれど,リガンド(ligand)という耳慣れない言葉はなんとなくもやもやする。 いろいろな「受容体に結合する特定の物質」をひっくるめてリガンドと呼んでいる。 何がすっきりしないかというと,「受容体」は日本語なのに,それに結合するものが「リガンド」というのは,釣り合いが悪い(笑)。 

とはいえ,リガンドは「結合する」という意味のラテン語をもとにした造語で,英語の世界でも receptor(受容体)とか binding site(結合部位)とかと並べるとやはり浮いている。 それだけ特別な用語だとも言えるのかもしれない。 それはともかく,リガンド依存性イオンチャネルというのは,細胞膜に埋まっていて,チャネルと一体化した受容体に特定の物質(リガンド)が結合することによってイオンを通す(あるいは遮断する)装置だ。

●チャネルが受容体と一体化している

「イオンチャネル」の働きと「特定のリガンドと結合する受容体」の働きは,機能としては別のものだ。 チャネルを開閉させるための受容体を持たないイオンチャネルも多数ある。 一方,チャネルのように細胞膜に埋まっていても,自分自身はイオンチャネルとして機能しない受容体も多数ある。 むしろ受容体を持ったイオンチャネルは特別な存在だ。 チャネルの側から見ると「リガンド依存性チャネル」という名前で,同じものを,受容体の側から見ると「イオンチャネル型受容体,ionotropic receptor」と別の名前で呼ばれるからややこしい。 
イオンチャネル型以外で細胞膜を貫通している受容体は,他の物質の構造や機能を変えることによって間接的に作用を引き起こすタイプで,「代謝型受容体,metabotropic receptor」と呼ばれる。

●リガンド依存性チャネルはリガンドで分類されている

チャネルは通すイオンの種類によって,一方,受容体は結合するリガンドによって区別される。 電位依存性イオンチャネルは単独のイオン専用のものが多いけれど,リガンド依存性イオンチャネルはひとつの種類のイオンだけを通すものは少なくて,だいたい陽イオンだとか陰イオンだとか,大雑把な分け方になる。 一方,受容体は特定のリガンド専用であることが原則なので,リガンド依存性チャネルはたいてい,受容体のリガンドの名前で呼ばれる。 だから実際は「イオンチャネル型受容体」としての存在のほうが幅をきかせている。 だからだろうか,機能的にはチャネルなのに,リガンドの名前でたいてい「○○受容体」としか呼ばれない。

イオンチャネルとして陽イオンを通すものでは,リガンドとしてはアセチルコリン,セロトニン,グルタミン酸,アデノシン三リン酸(ATP)とそれぞれ専用に結合するタイプ,陰イオンを通すものはガンマアミノ酪酸(GABA)とグリシンをそれぞれ専用にリガンドとするタイプなどが知られている。 その中でアセチルコリン(acetylcholine, ACh)Achをリガンドとするチャネルligand-channel はリガンド依存性イオンチャネルの代表的なもので,いくつもあるリガンド依存性イオンチャネルのうちの原型のひとつとも言われている。

●アセチルコリン受容体チャネルにはニコチンも作用する

アセチルコリンをリガンドとするイオンチャネルligand-channe は,アセチルコリンが結合すると,Na+sodium や K+ を始めとする陽イオンを選択的に通すチャネルだ。 その成り立ちからいうと,「アセチルコリン結合型イオンチャネル」なのだろうけど,実際は「ニコチン性アセチルコリン受容体(nicotinic acetylcholine receptor)」という名前で呼ばれる。 ときには短く,「ニコチン受容体(nicotinic receptor)」となる。 

ニコチン(nicotine)はタバコに含まれるあのニコチンで,もともとヒトの体内にある物ではない。 ヒトにある受容体をなんで他所者の名前で呼ぶのか?  最初に聞いたときはなんとなく納得いかなかったけれど,これはアセチルコリン受容体をさらにタイプ分けするための標式なのだ。 ニコチンは微量で死に至る中毒を引き起こす猛毒だ。 その結合する相手が「イオンチャネル型アセチルコリン受容体」というわけだ。 ニコチンが体内に入ると,神経情報とはまったく関係なく受容体を活性化してしまうので,害を及ぼすことになる。

ちなみにリガンドとは本来は生理的に体内で働いている物質をいうので,ニコチンはリガンドとは言えない。 リガンドと同じ部位に結合して同様の作用を持つ別の物質はアゴニスト(agonist)と呼ばれる。 だからニコチンは,イオンチャネル型アセチルコリン受容体に限れば,アセチルコリンのアゴニストだ。 
結局,今のところ,体内でニコチンが結合するのはアセチルコリンをリガンドとするイオンチャネル型受容体しかないし,このタイプの受容体はどれもニコチンと結合するので,「ニコチン受容体」は「イオンチャネル型アセチルコリン受容体」と同じ意味で使われる。 というよりむしろ,イオンチャネル型アセチルコリン受容体とか,アセチルコリン結合型イオンチャネルとか呼ばれることはほとんどない。

毒キノコが持っている毒の主成分である「ムスカリン(muscarine)」という物質は,体内では「代謝型アセチルコリン受容体」としか結合しないし,この受容体はどれもムスカリンと結合するので,「代謝型アセチルコリン受容体」は「ムスカリン受容体(muscarinic acetylcholine receptors)」と呼ばれる。 ムスカリン受容体には,アセチルコリンは当然,働くけれど,ニコチンは作用しないということも大事なポイントだ。)

(まとめ) ACh-receptors
・アセチルコリン受容体
  ・アセチルコリンをリガンドとするリガンド依存性イオンチャネル 
    = アセチルコリン結合型イオンチャネル 
    = イオンチャネル型アセチルコリン受容体 
    = ニコチン性アセチルコリン受容体 
    = ニコチン受容体
  ・アセチルコリンをリガンドとする代謝型受容体 
          (⇒ 別の連携関係にあるイオンチャネルなどに働く)
    = 代謝型アセチルコリン受容体 
    = ムスカリン性アセチルコリン受容体 
    = ムスカリン受容体

●ニコチン受容体はアセチルコリンで開く

ニコチン受容体は運動神経と骨格筋細胞のシナプスである神経筋接合部(neuromuscular junction)の受容体としてあまりにも有名だ。 自律神経の神経節にあるシナプス受容体としても重要だ。 それぞれ受容体に対面する神経終末から神経伝達物質(しんけいでんたつぶっしつ,neurotransmitter)として放り出されてくるアセチルコリンAchに反応して,受容体を持った細胞を興奮させる働きをする。

筋細胞のニコチン受容体と神経細胞のニコチン受容体は少しタイプが違うようだけど,基本的には同じ構造,同じ仕組みで働く。 タンパク質の5つの塊が寄り集まって細胞膜を貫通する筒を作っていて,そのうち2つの α サブユニット(あるふぁさぶゆにっと)という塊(かたまり)に,アセチルコリンが結合する特定の場所,結合部位(binding site)Ligand-Channel がある。 ニコチン受容体は結局,アセチルコリンの結合部位を2つ持っていることになる。
リガンドがないとき,チャネルは閉じている。 細かい構造はどうでもよいけれど,イメージとしては通路の途中に出っ張りがあって,これがイオンの流れを邪魔して通さないLigand-Channel。  

この受容体のまわりにリガンドである多量のアセチルコリンが舞い降りてくると,そのうちのどれかが受容体の結合部位につかまる。 受容体の α サブユニットは結合部位にリガンドがはまると全体の形を少しだけ変化させる。 そうすると,通路の途中の出っ張りが引っ込んで,イオンが通れるようになる。 アセチルコリンは1個の結合部位だけに結合してもチャネルはちょっとくらい開くらしい。 だけど,2個の結合部位にそれぞれくっつくとよりしっかり開くことになるLigand-Channel。 

チャネルが開くと,筋細胞型の受容体は Na+ や K+ を選択的に,神経細胞型の受容体はそれに加えて Ca2+ を選択的に通すことになる。 その結果,細胞は膜電位が大きく脱分極する。 脱分極は電位依存性イオンチャネルを反応させて,閾値を越えれば,その細胞が活動電位を発生する。

●アセチルコリンは好きでくっついているわけでもない

アセチルコリンは結合部位に「結合」するというけれど,別に好きでくっついているわけでもないし,しっかり「結合」しているわけでもないようだ。 大量のアセチルコリンのなかから,たまたま受容体のそばに来たものが,何かの拍子にうまくはまってしまったと考えたほうがいいくらいだ。 周りのアセチルコリンの仲間が少なくなると,「置いてかないで~」という具合に,自分から結合部位を離れていくからだ。 実はリガンド依存性チャネルのリガンドは,こんな感じじゃないと務まらない。 周りがいなくなってもくっついているくらいだったら,次の信号伝達に支障がでるからだ。 毒として作用する物質の中には,一度結合したら離れない恐ろしいものもある。 ニコチンはアセチルコリン結合部位に選択的に結合するけれど,周りのニコチンが消えると離れるらしいからまだましなほうだ。

●リガンドは片付ける必要がある

リガンド依存性イオンチャネルを有効に働かせるためには,受容体からリガンドがすぐに離れることが前提だ。そのためには,周りの結合しなかったリガンドや用が済んだリガンドは急いで片付ける必要がある。 基本的には組織液へ拡散したり,物によっては神経終末にそのまま回収されたり,適当な方法で分解されたりして,受容体の周りから片付けられる。 

アセチルコリンの場合は受容体のそばにアセチルコリンを分解する酵素,アセチルコリンエステラーゼ(acetylcholinesterase)actylcholine esterase が待ち構えていて,アセチルコリンを次から次に矢継ぎ早に,その成分であるコリン(cholin)という物質と酢酸に分解する。 神経筋接合部で放出された一回分のアセチルコリンはだいたい数ミリ秒で片付けられるらしい。 分解されると,もうアセチルコリンではなくなるので,受容体には働かない。 それぞれの成分は神経終末に回収されて,ふたたびアセチルコリンに合成されて神経伝達物質として再利用されることになる。 
(片付けを邪魔すると,それも毒になる。 マラチオン(malathion)などの有機リン系殺虫剤やサリン(sarin)はアセチルコリンエステラーゼの作用をブロックする。)

●通すも通さないも紙一重

ニコチン受容体のイオンチャネルは,受容体にリガンドが結合するまで閉じている。 しかし正確に言うと「ほとんど(なんとなく)閉じている」という状態だそうだ。 こういった分子は常に不規則に振動していてリガンドがなくても,時にはごく一瞬,チャネルが開くときもあるらしい。 また,逆にリガンドが結合している間も時々一瞬閉じたりしているのが観察される。 このことから,リガンドの結合はチャネルを完全にオープンにするのではなくて,開いている確率を格段に上げるという程度の働きをしているようだ。 まぁ,孔に一定の大きさの物を通すときは,ちょっとでも孔が小さければまったく通らないし,ちょっとでも大きければ楽に通過するのだから,この微妙な孔の大きさの変化をコントロールできればよいというわけで,このようなイメージのほうが現実的だ。 電位依存性イオンチャネルの場合も同様に,電位の変化によってチャネル開閉の確率が大幅に変化するという仕組みのようだ。 ただし,このサイトのアニメーションでは表現できないレベルなので,無視している。

○参考にしたサイト

Table of Common Neurotransmitters(Biochemistry of Neurotransmitters and Nerve Transmission), The Medical Biochemistry Page, May 26 2017.
Ligand-gated ion channel, Wikipedia, 2 July 2017. 
Nicotinic acetylcholine receptor, Wikipedia, 20 June 2017. 
Neurotransmitter,Wikipedia, 28 June 2017.
Gating movement of acetylcholine receptor caught by plunge-freezing. Unwin N, Fujiyoshi Y.,J Mol Biol. (2012)
アセチルコリン, 脳科学辞典,2015年3月26日.

○関連する記事

[040] 神経信号の伝達 neural signal transmission 041-heartmuscle80.gif
[053] アセチルコリン受容体 acetylcholine receptors (GB#114B03) AChreceptors80k3.gif
[024] 電位依存性ナトリウムチャネル voltage-dependent sodium channel
[021] 活動電位 action potential
[031] 興奮伝導 conduction of excitation
[028] 静止膜電位 resting membrane potential
[044] 伸張反射 stretch reflex
[013] 細胞膜の脂質二重層 lipid bilayer of the cell membrane
[004] 陽イオンと陰イオン(1)引力と反発力,cation and anion, attraction and repulsion 

○参考文献

Lehninger Principles of Biochemistry 6th, International Edition, Macmillan Higher Education, England.
カラー版 ボロン ブールペープ 「生理学」, 西村書店
Essential細胞生物学〈DVD付〉原書第3版,南江堂
プロッパー細胞生物学: 細胞の基本原理を学ぶ,化学同人
カラー図解 人体の正常構造と機能 全10巻縮刷版,坂井 建雄,日本医事新報社
人体機能生理学,杉 晴夫,南江堂
柔道整復学校協会編「生理学」,南江堂
東洋療法学校協会編「生理学」,医歯薬出版株式会社

rev.20140618,rev.20150514,rev.20150724,rev.20160130,rev.20160221,rev.20161014
rev.20161029,rev.20161207,rev.20170505, rev.20180404.


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    (ceoKIKKENより) [2015/04/27][6:06 PM]

    アニメでは表現できていませんが、ご自分の頭の中でイメージが出来上がったということで、
    それが一番です。よかったですね。これからも応援よろしくお願いします。
    > 求めていることが分かりました。
    > 「ほとんど(なんとなく)閉じている」イオンチャネルの状態の説明は、よくイメージできました m(_ _)m。

    (匿名より) [2015/04/27][8:19 AM]

    求めていることが分かりました。
    「ほとんど(なんとなく)閉じている」イオンチャネルの状態の説明は、よくイメージできました m(_ _)m。

基礎医学教育研究会のサイト、KIKKEN Lab(きっけんラボ)へようこそ。

ポイントを伝えるために大胆に要約しています。なお、内容には基礎医学教育研究会独自の解釈や表現が含まれています。あらかじめご了承ください。

できるだけ間違いのないように気を付けていますが、まったくないとは言えません(^_^;)(結構あります)。不明な点はご指摘いただけると助かります。 ※過去の記事でも、必要に応じて頻繁に修正しています。このオンラインの記述が最新版です。

アニメーションはこのまま画面から、PowerPointスライドにコピペできます。 利用するときは(KIKKEN, 2018)と付けてください。このサイトのコンテンツは、引用されたものを除き、基礎医学教育研究会およびその代表者である ceoKIKKEN に著作権があります。

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