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[048] 表皮細胞の入れ替わり epidermal cell turnover (GB#117A02)

[048] 表皮細胞の入れ替わり epidermal cell turnover (GB#117A02)

epidermal cell turnover


●からだを守る最前線

体の中は 60 % が水だという。 体の中は水だらけなのに,それが皮膚から漏れ出さないのは,皮膚のなかでも一番外側を覆っているごく薄い表皮(ひょうひ,epidermis)のおかげだ。 表皮は外からの水やいろんな物質の浸入,機械的な摩擦や紫外線の攻撃などからも中の細胞を守っている。 さらには細菌の浸入もここで見張っている。 表皮のすごいところは,いろんな攻撃にさらされながらも,細胞が毎日少しずつ入れ替わって,いつも新鮮な姿を保っているところだ。

●4週間で表皮は入れ替わる

皮膚(skin)というのは,外側から触れる部分の表皮(epidermis)とその下の真皮(しんぴ,dermis)を合わせて言っている。 表皮の厚さはおよそ0.2ミリだというから,だいたい年賀はがき1枚くらいの厚さしかない。 その中にだいたい 20 層から 30 層ほどの細胞層が詰め込まれている。 組織的には,重層扁平上皮 (じゅうそうへんぺいじょうひ,stratified squamous epithelium) という形式だ。 一番深い層は,一枚の基底膜 (きていまく,basement membrane)というシートを介して,その下の真皮乳頭 (しんぴにゅうとう,papillary dermis) というでこぼこした構造に密着している。 少数の特殊なものを除いて,表皮を作る細胞はすべて,基底膜のすぐ上に張り付いた基底細胞 (basal cell) の細胞分裂から生まれた角化細胞 (かくかさいぼう,keratinocyte)だ。 epidermal cell turnover basal-cell 角化細胞は下から上に順に押し上げられながら,その間に形や性質を変えていく。 その後半は生命活動は終わっていて,表皮特有の物質でできた角質 (かくしつ,corneocyte) というただの薄い断片のシートに変わる。 そして生まれてから 28 日前後経ったところで(※ 45 日前後という資料もある ← こっちのほうが新しいらしい),一番外側から剥がれ落ちる。 全身で毎日,だいたい数グラムの角質が剥がれているという。  だから小さなトゲが刺さっても,大部分が基底細胞より上にあれば,細胞と一緒に持ち上がって自然に抜けることになる。

●細胞は一生のうちに性質が大きく変わる

基底細胞から分裂した角化細胞はその後はもう分裂しない。 毎日少しずつ上に押し上げられながら,前半の二週間ほどは,膨らんだ形の細胞で,周囲の角化細胞との間の特殊な連結が小さなとげのように見えるので,有棘層 (ゆうきょくそう,stratum spinosum) と呼ばれる層の中にある。 その後,角化細胞は急に扁平になってきて,細胞の中にはケラトヒアリン (keratohyalin) という物質でできた顆粒が目立つようになるので,顆粒層 (かりゅうそう,granular layer) と呼ばれる 2 ~ 3 層の短い段階を経る。 epidermal cell turnover granular-layer

その後ほどなく細胞核を失って,細胞全体がほとんどケラチン (keratin)というタンパクの塊のシートになって,後半の二週間,角質層にとどまった後,剥がれ落ちる。 epidermal cell turnover horny ちょうど人間が生まれて,成長して老化して一生を終える間に,姿カタチや役割を変えていく世の中のイメージだなと思ったら,すでにそのように説明してあるサイトがあった。

●散らばったケラチンを固めることで角質化する

ケラチンは髪の毛の主成分としても有名で,たいへん丈夫な成分だということは実感する。 皮膚の角質はケラチンでできているということも常識のようなものだ。 それで,角質に変化する直前にある顆粒層は,そのケラチンを製造するところかと思っていたら,実は有棘細胞層のうちからケラチンそのものは細胞骨格の線維としてどんどん作られているという。 顆粒層で作られるケラトヒアリン顆粒が変化してできるフィラグリン (filaggrin) という物質が,細胞内に散らばっているケラチンタンパクを揃えて固める働きをするので,そこでにわかにしっかりとした硬い構造になるということだ。 

●角質層は意外と高機能

顆粒層に横に並んだ細胞同士は密着結合(tight junction)という特別に密閉度の高い接着になっていて,顆粒層の上下からのいろいろな物質の通過を強く制限している。 そのせいかどうかはわからないけれど,顆粒層から上に出ると,細胞内のほかの部品や構造はほとんど消えて,細胞は死ぬ。 それで角質層は,後は剥がれるのを待つだけのケラチンシートのかたまりかと思ったら,それほど単純ではなかった。 シートとシートの間には,細胞膜脂質の一種のセラミド (ceramide) という物質が充満していてシート同士を結合させていて,これも防水に役立っている。 また,ケラチンは一度固まると,フィラグリンの助けは必要なくなるようで,角質層ではフィラグリンは分解している。 しかしこの分解産物が今度は角質層に適度な水分を閉じ込める保湿因子 (moisturizing factor) として働くというので,ほんとにうまくできている。  さらに皮膚の皮脂腺から分泌された皮脂 (ひし,sebum) が角質層の表面全体をおおっている。 これらの要素が協力しあって,角質層は,内部に適度は水分を保持しつつ,水分の出入りを制限する強力なバリアになるのだ。 

●表皮に血液は流れない

表皮は毎日,新しい細胞が生まれて,生まれた細胞は顆粒層まで少なくとも2週間は成熟しつつ生き続けるけれど,細胞の周りに毛細血管はない。 毛細血管の先端は基底膜の下,真皮乳頭で折り返す。 この距離なら,顆粒細胞層との間で,必要なガス交換や物質交換は問題ないのだろう。 ガス交換に限れば,顆粒層だったら角質層を通じての外界との直接の交換は可能かもしれないけれど,ヒトにとっては,あるかもしれないものの,なくてもよいという程度のようだ。 一方,表皮に血管がないことで,表皮までだったら傷がついても出血することはない。 出血がないから細菌なども,血管に入り込む恐れは低い。 痛覚などの神経線維も真皮までしか来ていないので,直接の痛みは感じない。 表皮が傷つくくらいはしょっちゅうあるから,いちいち重大なことと扱わないという姿勢が見える。

●表皮内をパトロールする細胞がいる

epidermal cell turnover Langerhans cell表皮のことを勉強して驚くのは,血管も神経も持たず物理的・生化学的に境界を守る外壁のように思っていたら,その中を無数の特殊な細胞が常に外敵の侵入を監視して自由に動き回っているということだ。 これは樹状細胞 (じゅじょうさいぼう,dendritic cell) という免疫の働きをする細胞の仲間だ。 特別にランゲルハンス細胞 (Langerhans cell)という名前をもっているけれど,膵臓のランゲルハンス島とは発見者が同じということを除いて,つながりは無い。 ランゲルハンス細胞は有棘層の中を横に移動しながら,ときどき枝(樹状突起)を顆粒層に伸ばして,そこに異物の侵入がないかチェックしまわっているらしい。 そして異変があると,特別警戒態勢に入り(活性化して),突起を盛んに伸ばして顆粒層のそばまで移動し,細菌だったらそれを飲み込んでしまう。 異物を飲み込んだランゲルハンス細胞は直ちに,表皮から抜け出て,真皮のリンパ系に合流して,抗体産生などの免疫活動を活性化させる働きをするという。 

●ランゲルハンス細胞は毛の根本からやってくる

ランゲルハンス細胞は,もともとは血液の白血球の一種で,それが表皮内に住み着いたものだ。 血管がないのにどうして表皮にいるのだろうか。 異物を飲み込んだ後は基底膜を越えて真皮に移動できるので,どこから入ってもよいような感じだけれど,入ってくるときには決まったルートがあるらしい。 皮膚から飛び出ている毛の根本は,真皮の中に突き刺さっている。 その毛根の周囲は真皮の細胞ではなくて,表皮につながる細胞が取り囲んでいるのだ。 汗腺の根本も同様に表皮の組織が真皮に深く突き刺さっている。 真皮にある毛細血管から白血球の単球 (たんきゅう,monocyte) が這い出すとマクロファージ (macrophage) に変身する。 樹状細胞は真皮に住み着いたマクロファージで,ランゲルハンス細胞は,マクロファージが毛根や汗腺の部分から表皮に侵入してきたものだということだ。

●角質細胞は日に焼けても黒くならない

epidermal cell turnover melanocyte日光に当たる時間が長くなると,皮膚が黒くなる。 紫外線から身体を守るためにメラニン (melanin) という黒い色素が増えていることはよく知られている。 黒くなっているのは表皮の角化細胞だ。 しかし,意外なことに,角化細胞が紫外線に反応してメラニンを作るわけではない。 基底膜の上に,基底細胞に並んでメラニン細胞 (melanocyte) という別の細胞がバラバラと存在していて,メラニン製造はこの細胞が一手に引き受けている。 メラニン細胞は角化細胞にはならない。 紫外線の刺激を受けると,メラニン細胞は突起を四方に伸ばして,メラニンを詰め込んだ顆粒を隣接する角質細胞に受け渡すのだという。 つまり角質細胞のメラニン顆粒は,メラニン細胞からの貰い物なのだ。 

●真皮から表皮細胞は生まれない

表皮は真皮と乳頭部で基底膜を介して密着している。 もし何かの損傷があって表皮が剥がれ真皮がむき出しになったら,血管が傷ついて当然,出血する。 怪我が治るとき,その真皮から表皮は再生するのだろうか。 連続した構造なのでそれで大丈夫,のような気がするけれど,実はそれは起こらない。 表皮の基底細胞と真皮の細胞は一緒に皮膚を作っているけれど,生まれ育ちが全く異なっている。 表皮の基底細胞は「上皮組織 (epithelial tissue)」で,真皮は「結合組織 (connective tissue) 」という違う組織だ。 もっとさかのぼると,表皮は「外胚葉 (がいはいよう,ectoderm) 」由来の組織で,真皮は「中胚葉 (ちゅうはいよう,mesoderm) 」由来で,少なくとも自然な流れでは,生物学的に,真皮(中胚葉組織)から表皮(外肺葉組織)は(特別な操作をしない限り)生まれないのだ。 ただし,見かけで表皮が剥がれても,真皮の中に埋まっている毛根部分や汗腺の根本の,表皮と同じ系統の細胞が生き残れば,その細胞から表皮が広がって再生される。 そうでなければ,あとは剥がれずに残った表皮の縁から,基底細胞が少しずつ広がって角化細胞を積み上げていくのを待つしかない。 小さなやけどは大体この仕組みで修復される。

●革の財布に表皮はない

かばんや靴など,しなやかで丈夫な動物の皮膚を利用した革の表面は,この表皮の特徴を活かしたものだと思っていたら,意外なことに,表皮は革を作る工程のはじめの方できれいに剥がしてしまうものだそうだ。 革は結合組織を加工したもので,私たちが直接触れる革の表面はちょうど真皮乳頭の部分になる。 表皮は残しておいてもガサガサになったり,自然に剥がれて汚くなってしまうようだ。 つまり,表皮は死んだ細胞で強力なバリアを作っているけど,本当に根本まで死んでしまったら,バリアの役目を果たせなくなるのだ。 言い換えると,死んだ細胞の角質がバリアとして働くのは,表皮が生きている証とも言える。

○参考にしたサイト

・あたらしい皮膚科学1.皮膚の構造と機能 (北海道大学医学部皮膚科)
・皮膚の組織写真 ⇒ WEB HISTOLOGY(UMIN)
感覚器系 – 外皮(皮膚とその付属器)
・基底層が美肌を February 19, 2009
・肌細胞の一生を知る February 14, 2009
・新しい創傷治療(夏井睦)
・皮膚に覆われた謎
・皮膚バリアとランゲルハンス細胞の動態(久保亮治)
・毛の新たなる存在意義 -毛嚢は免疫スイッチ- 永尾 圭介
・皮膚科にかかる時の常識 ちかかね皮膚科
・表皮の構造と働き(KAO スキンケアナビ)

○関連する記事

[045] 皮膚の動静脈吻合 arteriovenous anastomoses in skin
[017] 糖質の吸収 absorption of carbohydratel
[034] 精子形成 spermatogenesis
[038] 深部体温の恒常性 homeostasis of the core body temperature 041-heartmuscle80.gif
[030] エンドサイトーシスと細胞内消化 endocytosis and intracellular digestion
[013] 細胞膜の脂質二重層 lipid bilayer of the cell membrane
[016] 血液循環 blood circulation

○参考文献

カラー版 ボロン ブールペープ 「生理学」, 西村書店
カラー図解 人体の正常構造と機能 全10巻縮刷版,坂井 建雄,日本医事新報社
トートラ人体解剖生理学 原書8版,丸善
柔道整復学校協会編「生理学」,南江堂
東洋療法学校協会編「生理学」,医歯薬出版株式会社

rev.20150709. rev.20150710. rev.20150813,rev.20161228,rev.20170506,rev.20170709, rev.20180224.


◆こころ医療福祉専門学校
http://kokoro.ac.jp/

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    (コトタマより) [2015/08/07][3:25 PM]

    言霊百神

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